桜涙 ~キミとの約束~
「い、つ?」
「小春の移植手術が決まる、三日前」
「そんな……そんなはずないよ。だって、奏ちゃんは手術が終わってからお見舞いに……」
「その頃はもう……葬儀は全部……終わってた」
悲しみを帯びたリクの言葉が、重くのしかかる。
「奏ちゃん……死んじゃったの?」
死という言葉を口にした瞬間、梢ちゃんの事を思い出して。
気持ちが、一気に追いついてくる。
瞳が熱くなって、呼吸が震えて。
「なんで……こんな大切なこと、もっと早く言ってくれなかったの?」
大切な幼なじみの死を、どうして私に教えてくれなかったのか。
お別れさえできなかったなんて、どうして……
そこまで考えて、思い出す。
さっきの、先生の言葉を。
『みんな、小春ちゃんが大切だから時を待っていたんだよ。そして、そうするように頼んだは私なんだ。だから、責めないでやって』
『もうすぐわかるよ。陸斗君、辛い思いをさせて、すまなかった』
『……いえ。奏チャンも、きっとそうしてくれって言うはずだから』
苦しそうな、リクの微笑みを。