桜涙 ~キミとの約束~


「先生が言ってたのって……奏ちゃんのこと、だったんだね……」


バカだ、私。


「ごめ……リク……私の体が、リクを苦しめてたんだね」


あの時の状態でストレスがかかれば不整脈が起きやすくなるのは明白だ。

それなのに、考えたらずでリクを責めてしまった。

思い返せば、違和感の傍にはいつもリクの悲しい表情があったのに。

笑って誤魔化す悲しい癖は、私の体をいたわってくれていたからなのに。

大切な人の死を隠し続けなきゃならなかったリクは、どれだけ苦しんだのだろう。


「ごめんね、リク……」


ごめんなさい。

優しくて苦しい嘘をつかせて。


奏ちゃんも、ごめんなさい。

何も知らずに幸せを噛み締めていたなんて。


だけど……でもね……

嫌だよ、奏ちゃん。


「こんなサヨナラなんて……っ……嫌だよ、奏ちゃん」


出会ってから今日までに積み重ねた思い出が溢れていく。

楽しかった日々が、奏ちゃんの笑顔が、思い出の中だけのものになってしまう。

大切な人を失ってしまった悲しさに耐え切れず、私は、奏ちゃんの遺影の前で泣き崩れた。

ペタリと座り込んで奏ちゃんの遺影を見つめながら涙を流し続ける私を、背中からリクの体温が優しく宥めるように包み込む。


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