桜涙 ~キミとの約束~
『僕も……約束するよ』
私は、奏ちゃんが雪桜の中で交わしてくれた約束を思い出しながら声に乗せる。
「僕らは幼なじみ。何があっても、どんなに遠く離れてても、僕も小春の味方だ」
キュッと、心臓が切なく締め付けられる。
「ここで、奏チャンが言ったの?」
「うん。それで……リクを救ってくれって、頼まれたよ」
「オレ、一生奏チャンには頭が上がらないなー」
「私もだよ。元々上がらなかったけど」
言うと、リクが声を出して笑った。
そうして、思い出したように話す。
「そういえばさ、奏チャンのお母さん、毎日お墓に手を合わせてるんだって」
奏ちゃんのおうちのお墓は町内のお寺にある。
徒歩でいける距離だけど、あれからもう一年。
いくら近くても、毎日となればそこに深い情がある気がして。
「邪険にしてるわけじゃなかったって事?」
「どうなんだろ。でも、喪って初めて気づくこともあるから」
きっと、リクの胸中にあるのは亡くなった自分の母親の事なんだろう。
少し遠くを見るように桜を眺めるリクの横顔は、悲しいというよりも穏やかな表情。
ここで泣いていた少年の面影は、そこになかった。