桜涙 ~キミとの約束~
到着した家の中に人の気配はなかった。
どうやら、いつもは家にいるお母さんはどこかに出かけているみたいだ。
「お母さんは留守?」
「……みたい」
「そっか。じゃあ、オレがちょっと手伝うよ」
玄関で靴を脱いで家にあがると、リクは慣れた様子でキッチンへの扉に手をかける。
「パジャマに着替えておけよ。オレ、飲み物持ってくる。あ、薬の場所は?」
「んと……カウンターの棚に入ってる」
「オッケー」
キッチンへと消えたリク。
私は自分の部屋に向かいながら、昔からリクは頼りになるなと熱で沸騰しそうな頭で思っていた。
優しくて頼りになる。
女の子からだってモテるし、告白された事だってあるはずなのに……リクに彼女が出来たという話は聞いたことがない。