桜涙 ~キミとの約束~
「オレ、男だよ。幼馴染だけど、男だ」
少し苦しそうなその声に、私の心臓がキュゥッとなる。
私たちの築いてきた何かに、ヒビが入ったような気がした。
「……なんてね。それより、着替えはオーケー?」
いつもの調子で明るく言ったリク。
着替えをすませた私は頷くと、ベッドの上に腰掛けた。
それと同時にリクが部屋に入ってくる。
「はい、薬と飲み物。じゃ、あとはおとなしく寝ておばさんたちが帰ってくるのを待ってな。あ、寝れないなら俺が遊び相手になってやろうか」
さっきの会話がウソみたいに、リクはいつも通りのリクだ。
本当なら、このまま私もいつも通りにすればよかったに。
「……リク」
「うん?」
そうしなかったのは、熱のせいか……
それとも、どこかでもう、入ったヒビは修復できないんだとわかっていたからなのかもしれない。