桜涙 ~キミとの約束~
「勉強も出来てスポーツも出来る。顔もよし、性格もよし。ウソみたいな人だね」
奏ちゃんを分析するよっちんの声は淡々としている。
顔もいつもの通り涼しいままだ。
「ウソって。でも、奏ちゃんは奏ちゃんだよ」
「そうね。いい間違えたかもしれない。彼はきっと、ウソつきなんだわ」
「……え?」
穏やかじゃないよっちんの言葉に、私は思わず足を止めてしまう。
よっちんはそんな私に気付いて振り返った。
「奏ちゃんが、ウソつき?」
「私には、そう見えるの」
薄く微笑んだよっちんはそう言うと、私に「早く行こう」と促す。
私はなんとか頷いてよっちんの隣を歩いたけど、頭の中はウソつきという言葉の答えを探していたのだった。