桜涙 ~キミとの約束~
羞恥心に今すぐ透明人間になりたいなんて考えて。
白いテープを切り、一着でゴールしたリクの腕の中から解放された私は、地にしっかりと足をつけて彼を睨んだ。
だけど、リクはププッと笑う。
「顔、真っ赤」
「リクのせいでしょ!」
「しょうがないんだって。借りるものがこれだったんだから」
言って、リクは一枚の紙を私に見せた。
そこに書いてあった文字は……
【 大切なもの 】
「たい、せつって……」
目を瞬かせてリクを見ると、彼は紙を私に手渡し、校庭の土に指で文字を書く。
「"物"は家にあるから無理で、こっちの"者"だったら小春しか浮かばなかった」