ほうき星 ~運命の輝き~

「え、何?今なんて言った?」

「なんでもないよ。さっ行こ」


彼の言葉を聞き終えるか終えない時に踏切の遮断機が上がった。


スタスタと歩き出した彼の背中を見つめると昔よりも遥かに大きかった。


ズボンのポッケに両手を突っ込み耳あてにネックウォーマーと寒さ対策バッチリ。


「手袋すればいいのに」


後ろからコッソリ呟くとどうやら聞こえたらしくわざわざこちらに向き鼻を摘まれた。


「うるせぇ」

「もぉっ」


摘んだ手が鼻から離れた瞬間、すかさずひんやりとする鼻を手袋越しに手で撫でた。


手袋をしていない彼の手は冷たく冷えていた。


おかげであたしの鼻も熱を奪われてしまった。


「わざわざ丘まで行かなくても適当にビルの屋上でも良かったんじゃない?」

「あのなぁ…丘から見る彗星は格別なんだよ」


んなこと言われたって…


「悠、アンタ今が何月で季節はなんなのか分かってる」

「何言ってんだよ希。とうとうボケたのか?今は冬真っ只中の12月だろうが」

「じゃあ…」


あたしは一旦言葉を区切ると目の前のバカにちょいちょいと手招きをして「耳貸して」と静かに囁き寄せた耳に思いっきり声を荒げて言った。


「どーして一人で来なかったのよ!!」


あたしの大声に驚き悠は動けなくなった。


まったく……。


信じらんない!


天体観測ぐらい一人で行きなさいよ!


こんな夜中に他人を起こしてまですることじゃないじゃない!!


ほうき星だか干し柿だかしんないけど勝手に一人で来て見ればいいのよ!!


大体…あたしをなんで呼んだのよ?!
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