もうひとつの恋
「ちょっ!桜井?

こらっ!なんで逃げるのよぉ!」


慌てて小走りで追いかけてくる美咲さんを無視して、俺はそのままズンズン中へと入って行く。


それでもとうとう追いつかれて、俺はグイッと肩を掴まれた。


仕方なく足を止めて振り返ると、冷たい目で美咲さんを睨む。


彼女はハァハァと息を弾ませながら、恨みがましい目で俺を見た。


「なんで先に行っちゃうの!?」


「30分も遅刻しといて、余裕で歩いてくる人には言われたくないですよ」


嫌みたっぷりにそう言ったのに、彼女は悪びれた様子もなく答えた。


「男のくせに細かいこと気にしないの!

女性を待たせるよりいいじゃない

男は女性を待つ間に、いろいろ想像して自分の気持ちを高めるものよ?」


得意気にそう話す美咲さんを見て、俺は呆れながらため息をつく。


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