もうひとつの恋
今日は健太の誕生日。
平日なので、仕事が終わってからさとみさんの家に向かっていた。
こないだ買ったプレゼントも持ったし、忘れ物はないな……と確認して、彼女の家へと急ぐ。
すると胸ポケットから携帯の振動が伝わってきた。
「はい!桜井です」
さとみさんからだとわかり、元気よく電話に出る。
「あっ桜井くん?
今、どこら辺?」
「今、駅についてそっちにむかってるとこです!」
「そっか、良かったぁ
あのね?ケーキ取りに行くの忘れちゃって
駅のそばのケーキ屋さんなんだけど、桜井くん来るとき寄ってもらってもいいかな?」
頼られたことが嬉しくて俺はすぐに承諾して電話を切った。
駅から少し離れてしまっていたけれど、もう一度ケーキ屋を目指して引き返す。
目当ての店を見つけると、店員に声をかけた。
「あの、予約していた石田ですけど、バースデーケーキ取りに来ました」
俺は咄嗟にさとみさんの名字を思い出しながら、店員に告げる。