もうひとつの恋
「はいはい!もう終わり!
今日は健太の誕生日なんだから、ほらっ座って座って」


さとみさんに促されて、ごちそうがたくさん並んだテーブルの周りにそれぞれ座った。


健太はそのまま俺の膝の上にちょこんと座る。


まだ首も据わらない頃から見てきた俺は、父親ってこんな気持ちなのかなと健太の成長を嬉しく思った。


「じゃあとりあえず乾杯しようよ」


美咲さんがそう言ってグラスにビールをつぎ出す。


健太にはジュースを用意してあげると、大人の真似をして一生懸命コップを持った。


カチンと音をさせてグラスをそっと当ててあげると、その音が面白かったのか、さとみさんや美咲さんにもやってくれとせがみ始める。


「健太、おめでとう!乾杯!」


「乾杯!」


二人ともカチンと音をさせて健太のグラスに当ててあげた。


健太は乾杯がちゃんと言えなくて「ぱぁい!ぱぁい!」とみんなの真似をしながら、嬉しそうにはしゃぐ。


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