もうひとつの恋
そんなしぐさ一つ一つが愛しく思えて、俺はなんともいえない感動に包まれた。


俺ってこんなに子供好きだったっけ?


自分の感情に戸惑いながら、さとみさんの子供だからなのかもしれないと納得する。


健太の生まれて初めての誕生日にこうして一緒に祝えることが、すごく幸せなことのように感じた。


課長は自分の子供だと言うのに、この小さな命の成長も、初めての誕生日も、体験できないでいる。


それに比べて俺は健太の成長を全てこの目に焼き付けてきて、それを鮮明に思い出すことが出来た。


だとしたら……俺はラッキーなんじゃないか?


課長の名前を一文字もらっていたとしても、その時の感情と今の感情とではもう違うかもしれない。


俺にだってこの先、いつになるかわからないけれど、チャンスが巡ってくるかもしれないんだ。


そしていつか、健太の父親になることが出来ればこんなに嬉しいことはない。


先ほど感じていた不安を希望に変えて、俺は健太の誕生日を思う存分楽しんだ。
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