もうひとつの恋
チラッと彼女の左手を見ると、確かに婚約指輪らしきものが薬指にしっかりとはまっている。


彼氏くらいは出来てるとは思ったけれど、結婚まで話が進んでるとは思わなかった。


驚きすぎて言葉を失っていると、俺のそんな様子を見ていた彼女は少しだけ寂しそうに言った。


「ほんとはさ……

純ちゃんのお嫁さんになるのが夢だったんだけどね……」


俺とのことを思い出すように遠い目をしながら、結衣はふふっと優しく微笑む。


「あれから結衣……すごい落ち込んで、就職もしたばっかりだったから仕事にも影響出ちゃってさ……

そんな時にね?

仕事を教えてくれてた先輩が結衣のことすごく心配してくれて、話聞いてくれたんだ

それで私がまだ純ちゃんを引きずってるのも全部引っくるめて受け止めるから、付き合ってくれって言われて……」


そこまで聞きながら、俺は自分だけが辛い恋をしてると思っていたことを恥ずかしく思った。


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