もうひとつの恋
結衣もあれから俺をふっ切るために苦しんでいたんだと思うと申し訳ない気持ちで一杯になる。


でもだからこそ結衣を愛してくれる男性が現れたことに、心の底から感謝した。


「で?付き合うようになったんだ」


からかうようにそう言うと、結衣は照れたように答える。


「うん

彼といるとすごく安心するの

愛されてるなぁって実感できるし、それで付き合うようになって……

そしたら、つい最近、プロポーズされたんだ」


嬉しそうに彼の話をする結衣を見て、俺は不思議な気分だった。


しいて言えば、嫁に出す父親のような気持ちとでも言うんだろうか?


彼女が幸せになることを、素直に喜べる自分がいる。


やっぱり結衣は妹みたいな存在だったんだと、あの選択は間違いじゃなかったことを改めて確信した。


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