もうひとつの恋
でもそれを結衣に話したところで、もう会うことはないだろう彼女を心配させるだけだ。


「嘘ついてる……」


「えっ?」


「純ちゃん、私を納得させるために嘘ついてるでしょ?」


本音を言い当てられて、動揺する俺に結衣は畳み掛けるように言った。


「何年、純ちゃんのそばにいたと思ってるの?

純ちゃんの嘘なんかすぐ見抜けるんだから!」


悲しそうな顔をしてそう訴える結衣に、俺は仕方なく謝った。


「ごめん……悪かったよ……

これから幸せになろうっていう結衣にあんまり心配かけたくなかったんだ……」


結衣はそんな俺に、心外だと言わんばかりにくってかかる。


「私……純ちゃんにも幸せになってほしいもん!

そんな寂しそうな目で、相手の人のこと考えてる純ちゃんなんて見てられないよ」


結衣から見ると、俺ってそんな風に見えるんだろうか?


自分の態度が結衣を不安にさせてるんだと気づいて、俺はもう少しだけさとみさんに歩み寄ってみようかなと思えた。


< 129 / 432 >

この作品をシェア

pagetop