もうひとつの恋
「そうだけど?

忙しいんでしょ?

また改めるから、気にしないで?」


絶対、わざと言ってるな……


仕方なく俺は美咲さんへの態度を改めるべく、謝った。


「すいませんでした!

大丈夫です、忙しくないですって!」


美咲さんは俺の慌てた様子に満足したのか、勝ち誇ったように口を開く。


「最初からそう言えばいいのよ

じゃあさとみに変わってあ・げ・る」


くっそー、まったくこの人は……


げんなりしながら携帯を持ち直すと、さとみさんの涼やかな声が聞こえてくる。


「もしもし?桜井くん?

忙しいのにごめんね?

実は今度の日曜日に健太の保育園のお遊戯会があるんだけど、桜井くん来れるかなって思って……」


健太のお遊戯会?


そんな大切な行事に俺なんかが行ってもいいのかな?


「えっ!?俺なんかが行ってもいんですか?」


そう思った通り伝えると、さとみさんは「もちろん!」と言ってくれた。

正直、今週は日曜出勤するつもりでいた。


でもそれまでに残業を増やせばなんとかなりそうな気がする。


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