もうひとつの恋
「それでは次に、りんご組さんの劇で、狼と七匹の子やぎです!
お母さんやぎが買い物に行った後に、狼がお母さんやぎのふりをして子やぎを食べようとしますよぉ。
子やぎさん達はちゃあんとお留守番出来るかな?
みんなも応援してあげてください!
それでは始まり始まり~!」
保育園て初めて来たけど、先生ってこんなにテンション高いんだな?
俺は今までにない経験に戸惑いと驚きを隠せないでいた。
狼と七匹の子やぎかぁ……
懐かしいなぁ……どんな話だっけ?
ぼんやりそんなことを考えていると、美咲さんが俺に「はいっ!」と言いながら、ビデオカメラを手渡してきた。
「何ですか?これ……」
「何って、ビデオカメラだけど?
見ればわかるでしょうが」
「いや……ビデオカメラなのはわかりますけど、何で俺に渡すんですか?」
「あんたが撮るからに決まってんでしょ?
何のために呼んだと思ってんのよ」