もうひとつの恋
「うーん……」
隣で課長が唸ってる。
横目でチラッと見ると、なかなか片付かない仕事の山を前に頭を抱えているようだ。
「あぁー、これが終わんなきゃ、昼飯も食えねぇ!」
そんな課長を見て、思わず笑いそうになる。
上司で歳だって8歳も違うのに可愛いと思ってしまうのは失礼だろうか?
「大丈夫ですか?課長」
ニヤケる顔をなんとか戻してそう声をかけてみる。
「うーん……あんまり大丈夫じゃないかも
桜井ぃ、助けてくれ!」
せっかく普通を装ったのに我慢できなくて笑ってしまいながら、横から書類を見てみた。
「でもそれ課長じゃないと出来ないやつじゃないですか」
呆れた声でそう言うと、課長はさらに甘えてくる。
「わかってるけどさぁ
ちょっと言ってみたかったんだよ」
情けない声を出しながら俺なんかにそう言ってくれる課長が、俺はやっぱり好きだ……と思う。