もうひとつの恋
「しかも天敵の私をこんなとこに呼び出して、呑みませんかぁ、なんて、さとみのこと以外考えられないじゃん」


俺ってそんなにわかりやすいのか……


ガックリしながらため息をつくと、美咲さんは急にズイッと俺に顔を近づけて、真剣な眼差しを向ける。


思わず怯んで後ずさると、美咲さんは珍しく静かな落ち着いた声で話し始めた。


「あんたの気持ちは痛いほどわかるけど……

さとみははっきり言って難しいと思う」


今の現状を突きつけられた気がして、俺はショックを隠しきれなかった。


自分でもわかっていたつもりではいたけど、他人からはっきり言われると、こうも傷つくものなのか……


「わかってます……

でも万が一ってこともあるし、俺……健太の父親に早くなってやりたいんです」


今の正直な気持ちを美咲さんに伝えると、思いがけず彼女も真剣に向き合ってくれる。


「うん……健太もなついてるし、私も正直あんたたちがくっついてくれたらどれほどいいかって思うよ?」


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