もうひとつの恋
「わかった!

仕事で海外に行くとかなんとか、適当に理由見つけて断るよ」


そう言ってもらえると、決心がかなり揺らぎないものになる。


「ありがとうございます!

この恩は一生忘れませんから!」


心の底からそう言ったのに、美咲さんはいつものデビル美咲に戻ってフフンと鼻で笑って俺に言った。


「そうだね?

かなり大きい貸しになると思うから、覚悟しときなさいよ!」


「ちょっ!美咲さん?

さっきまでの天使のような顔はどこいったんすか?

悪い顔になってますって!」


「誰が悪い顔だ!!

桜井!調子に乗るなよ!」


「うわぁ!すいません」


この人は今まで俺が負担にならないようにしてくれてたんだ。


彼女がいたから、さとみさんや健太とここまでの関係になれたんだと気づく。


やっぱり、俺なんかとは人生経験が違うや……


今まではしょうもない姉さんくらいにしか思っていなかった美咲さんを、今日初めて、大人の女性だったんだなと実感した。



< 157 / 432 >

この作品をシェア

pagetop