もうひとつの恋



水曜日の昼下がり――


だんだん暖かい季節に突入し、動物園に行くには頃合いかなと思う。


今日も外は眩しいほどの青空が広がり、上着がなくても心地いいくらいだ。


美咲さんに相談を持ちかけてから、すでに何ヵ月も経っていた。


俺はここ何ヵ月か、わざとさとみさんに会うのを控えて、動物園に行く日を心待ちにしていた。


今日こそ、動物園に誘おう。


約束までに時間があいてしまうと心が揺らぐ気がして、俺は今週の日曜日に行こうと誘うつもりでいた。


今日がさとみさんの休みの日だということは、事前に美咲さんから情報を得ている。


自分の休みの日には保育園を休ませて、健太と一緒に過ごすのが、さとみさんのこだわりだった。


こんなにいい天気なんだから、きっと公園かどこかに連れていってるだろう。


昼休みの短い時間を利用して、ふぅ……と息を整えながら携帯電話に向かうと、思いきって通話ボタンを押した。


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