もうひとつの恋
ふと気づくと課長の携帯のランプがチカチカしている。


奥さんからなんじゃないかと思うと、胸がドキドキした。


一度会ってから、すでに一年の月日が過ぎていると言うのに……


思い出すだけでこんなにも胸が騒ぐなんて……


俺はそんな思いを頭から振り払って、わざと課長を冷やかすように言った。


「なんか携帯チカチカしてますよ?

綺麗な奥さんからじゃないんですか?

少し気分転換にメールで奥さんと話せば、仕事はかどるかもしれないですよ?」


すると課長は一瞬、俺を恨みがましい目で見たあと、小さくため息をついて納得したように言った。


「そうだな?少し休憩するか

桜井、コーヒー入れて」


まったく……仕方ないな……


甘える課長にコーヒーを淹れるために、おもむろに席を立つ。


コーヒーメーカーからカップにコーヒーを注ぎながら、横目でチラリと課長を見ると、携帯をチェックしているようだった。


< 16 / 432 >

この作品をシェア

pagetop