もうひとつの恋
プルルルル…プルルルル…プルルルル…プルルルル…プルルルル…


外で遊んでたら、携帯に気づかないかな?


そんな可能性も視野にいれて粘り強くコールし続けていると、慌てた様子で電話に出るさとみさんの息遣いが聞こえた。


彼女が何か話し出す前に、俺は勢いよくこちらから話し始める。


「さとみさん!お久しぶりです!元気ですか?」


さとみさんはクスクス笑いながら、意地悪な返事をしてくる。


「私も健太も元気だよ?

桜井くんは?彼女出来た?」


まったく、この人は……


人の気も知らないで……


だんだん美咲さんに似てきたんじゃないか?


「何言ってんですか!

俺はさとみさん一筋だっていつも言ってるでしょ?」


わざと冗談ぽく、そう伝えると、さとみさんもいつものように決まったセリフを繰り返す。


「だーかーら、28歳にもなって、こんなおばさんの相手ばっかりしてたら、ほんとに婚期逃しちゃうよ!」


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