もうひとつの恋
やっぱり、奥さんなのかな?


そんなしょうもないことを思いながら、課長の席までコーヒーを運ぶ。


カップを机に置いたとき、課長が急に携帯の画面をパタンと閉じた。


見られたくない内容なんだろうか?


でもあんなに急いで隠すように閉じなくても……


とりあえず自分の席に座り、しばらく課長の様子を窺った。


やっぱりソワソワしていて怪しい。


しかもメールを何度かやりとりしているようだが、あきらかに動揺しているように見える。


ようやくメールのやりとりが終わったと思ったら、今度は目の前の仕事の山を見ながらまた頭を抱えていた。


絶対、奥さんからのメールじゃないな……


俺の中の男の勘が働く。


女……だとしたら……


あの奥さんの悲しむ姿なんか想像したくない。


課長も尊敬しているし大好きだからこそ、奥さんを悲しませるような真似はしてほしくなかった。


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