もうひとつの恋
健太にまでそう言われてしまっては、後ろに座らないわけにはいかない。


いつもは美咲さんが運転して、助手席にさとみさんのパターンが多かった。


今回は美咲さんがいないから、俺が運転して助手席にさとみさんのシチュエーションに憧れてたんだけど……


でも健太優先てさっきまで自分の中でも決めてたわけだし……


まあ帰りもあるしな?


そう納得して健太の横に乗り込む。


すると健太は興奮ぎみに俺に話しかけてきた。


「じゅんちゃん、きいてきいて!

あのねぇ、おれ、じぶんでぜぇーんぶできたんだよ?」


すごいでしょ?と言わんばかりの顔で、目をキラキラさせながらそう言う健太に、俺は約束を守ってくれたことが嬉しくて、思いっきり誉めてあげる。


「お!すげーなぁ!
このボタンも自分でやったのか?
約束守ってくれたんだな!
えらいぞ!健太!」


そう言いながらワシワシと頭を撫でると、健太は嬉しそうに、やめろよ~と言いながら、まんざらでもなさそうな顔をする。

< 176 / 432 >

この作品をシェア

pagetop