もうひとつの恋
それからゆっくりとさとみさんの方に向き直ると、彼女の目をじっと見つめながら、自分の気持ちを伝える。


「いつも……冗談だと思われてるかもしれないですけど……

俺、さとみさんのことが……




好きです!」




言ってしまった……


もう後戻りは出来ない。


やっと伝えることが出来た安堵感と、さとみさんがどんな返事をするのかという不安感とで、俺の心が揺れる。


ふぅ……と息を吐きながら隣の様子を窺うと、さとみさんが目を泳がせながら、小さくため息をついたのがわかった。


俺はそのことに少なからずショックを受けて、自分の気持ちがちゃんと伝わってないんじゃないかと焦りだす。


――だめだ!


ちゃんと、何で好きなのか……どれほど大切に思っているのか……


それに健太のことだって……


父親になる覚悟もあることもちゃんと伝えなくちゃ!


「あの、俺、前からずっとさとみさんのことタイプで……

でも課長の奥さんだから諦めてたというか、憧れだったというか……」


俺は慌てながらそう言うと、いったんさとみさんの顔をちらっと見て続けて言った。


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