もうひとつの恋
「課長のことで傷ついてるさとみさんを支えてあげたいって思って……

それから離婚したって聞いたときも、いてもたってもいられなくて

健太のこともすごく可愛いし、これからも仲良くしていきたいっていうか……」


だんだん自分が何を言ってるのかもわからなくなって、追い詰められた俺は予定してなかったことまで言ってしまう。


「あの、それで……俺

健太の父親になる覚悟もあります!

だから……


俺と結婚してください!」


そこまで言ってしまってから、俺は心の中で後悔した。


結婚て……


いきなりそんなこと言ったら重いだろ……


何を血迷ってんだ……俺……


そっとさとみさんの方を窺うと、黙ったまま俯いて俺の方を見ようとはしない。


俺は、まだ結婚ていうのは先の話で、まずはお付き合いからと言い直そうと口を開きかけたとき、さとみさんがスッと顔を上げて、何かを決心したように俺の目を見つめた。


「……ありがとう

気持ちは、すごく嬉しい

私のことを好きだって言ってくれたことも……

健太を大事に思ってくれて父親になるって言ってくれたことも……」


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