もうひとつの恋
そこまで言うと、さとみさんは鼻をすすりながら涙を拭う。


嫌な、予感がした。


「でも……ごめんなさい
私の中で桜井くんへの気持ちは弟みたいな感情で、恋愛としての感情とは……違うの」


やっぱり……ダメか……


分かりきっていた答えだったけれど、わずかな可能性もあるかもしれないって希望も持ってたのに……


泣きながら申し訳なさそうに俯くさとみさんに心配かけたくなくて、俺は無理やり笑顔を作り、彼女に優しく話しかけた。


「わかってましたよ……

さとみさんが俺を恋愛対象しては見てくれてないってこと

でも俺の存在自体は必要としてくれてるってことも……」


そう絞り出すように言うと、さとみさんは濡れた瞳を大きく開いて俺を見る。


「だって、わかりやすいくらいに、俺と二人きりになるの避けてたし、絶対美咲さんのこと呼ぶし……」


そう言って力なく笑いながら、大きく溜め息をついた。


「でも……

それでも自分の気持ち伝えたかったんです

例え、受け入れてもらえなくても……

もしかしたらって……


あはは……賭けに出ちゃいました!

そのために美咲さんにも相談して、今日は来ないようにしてくれたんですから」


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