もうひとつの恋
「そんなわけなんで、さっきの告白は忘れてください!

これまで通りのお付き合いで、よろしくお願いします」


さとみさんはどう思うだろう?


もう会えないと言われないように俺はそう言って頭を下げた。


「あ!でももし俺に惚れるようなことがあれば、いつでもさっきの告白を思い出してくれてもいいですから!

さとみさんからの逆プロポーズなら喜んで受けますよ?」


それからさとみさんになるべく気を使わせないように、冗談混じりにそう言って笑って見せる。


さとみさんは俺の言葉にさっきよりも激しく泣きじゃくって顔を手で覆ってしまう。


そんなさとみさんを見ていると、自分が振られたんだってことを改めて認識させられた。


胸が痛くなるのを抑えながら、今度は静かに……ふざけることなく本当の気持ちを伝える。


「さとみさん……

まだ課長のこと思ってるんですね?

……課長との大事な忘れ形見を一生懸命に育ててるさとみさんが、健太を通していつも課長を見てるって……気づいてました

でも……それでも俺が代わりになれればって思ったんですけど……

さとみさんはやっぱり強いや……

そんな寂しさだけを埋めるような選択はしなかったですもんね?


……そんなさとみさんだからこそ好きになったんですけど……」


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