もうひとつの恋
「もう一杯呑みましょうよぉ!ねっ?
もう一杯だけ!」
しつこく絡みながら潰れそうになってる俺に、付き合ってくれるのはこの人しかいない。
「わぁかったから!
もう一杯だけだよ?
あんたもうダメ!
送ってくからこれ呑んだら帰るよ!?」
呆れながらも、俺の辛い気持ちをわかってくれているからか、彼女はいつもより優しい。
「美咲さ~ん……
俺……振られました……」
酔っ払いながらそう言うと、美咲さんがうんざりしたように答える。
「あんた、それ……
今ので10回目」
「さとみさん……まだ課長が忘れられないみたいです……」
美咲さんの言葉なんか何も聞かずに、俺は酔いに任せて自分の思ったことをだらだらと口にする。
「はいはい……
それも6回目だって……」
なんだかんだ言いながら付き合ってくれる美咲さんに、俺は嬉しくて甘えてしまう。
「美咲さんに言われた通り!
弟みたいって言われましたよ」
項垂れながらそう言うと、グラスをガッと掴んで、焼酎を一気に飲み干す。