もうひとつの恋
「わずかな望みを賭けて、ちゃんと気持ち伝えたんだから、あんたは頑張ったんだよ!

普通は尻込みして言わないまま過ごしちゃうと思うよ?」


そんな優しい言葉をかけてくれるなんて思ってなかった……


俺がどれだけさとみさんを好きだったのかを知ってるのは、俺以外には美咲さんだけなのかもしれない。


そんなことを頭の片隅でぼんやりと考えていると、美咲さんが元気な声で俺に言った。


「桜井!

明日、呑みに行こ!」


急に言われて驚いたものの、俺を励まそうとしてくれてるのがわかる。


そうだな?一人でグダグダいじけてたって仕方ないし……


気分転換になるかもしれない。


美咲さんに愚痴でも聞いてもらおう。


「わかりました!

明日、こないだの店でいいですかね?

美咲さん、覚悟しといてくださいね?」


ようやく笑いながらそう言うことが出来ると、美咲さんはホッとしたような声を出す。


「わかった

明日だけはあんたの愚痴に付き合ってあげるから

今日はもう寝なさい?」


お母さんのようにそう言われて俺は苦笑しながらも、美咲さんにかなり心配させていたことに気づく。

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