もうひとつの恋
やった!
会社から辞令が出て、俺はようやく課長になることが出来た。
必然的に課長も部長に昇進したわけで……
この一年頑張って仕事した甲斐があったなぁと嬉しく思う。
ちょうど判を押してもらいたい書類を見つけて、俺は課長をからかいに近づいた。
「部長、これ目を通して大丈夫でしたら確認印押してください」
満面の笑みでそう言うと、課長は笑いながら俺の頭を資料で叩く。
「お前ねぇ……
その呼び方、まだ気が早いだろ?」
そんなに痛くもない頭を擦りながら、俺はさっきよりももっと笑顔を作って言った。
「照れない照れない!
もう辞令出てるんですから
大沢部長?」
課長はうんざりした顔をして、諦めたように俺を見た。
「あぁ、はいはい、ありがとう
桜井課長こそ、今後ともよろしく」
どうやら俺が呼んでもらいたかったのを察したらしい。
全然心はこもってないけれど……