もうひとつの恋
「いやぁ、やっと気づいてくれましたか?

俺、ようやく課長なんですねぇ……」


腕を組んで目を瞑りながらウンウンと感慨深げに頷くと、課長がいきなりプッと吹き出した。「ほら、貸せ」


課長は俺の持っていた紙を引ったくって、とりあえず判を押してくれた。


俺が何を言っても、最後には笑って許してくれるのは、きっと後ろめたいからなんだろう。


課長から離婚したことを告げられたのは、つい最近のことだ。


たぶんさとみさんとの離婚を知ったのが、外部からだったことを気にしていたのかもしれない。


今回は直接、俺に言いに来てくれたのだ。


今はまた一人で暮らしているらしいが、以前のような荒れた生活をしている様子はなかった。


3年の結婚生活だったと聞いたけど、それはそのまま俺とさとみさんとの時間でもあるんだな……と複雑な気持ちになる。


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