もうひとつの恋
「ちょっ!桜井、近い!

わかったよ!ちゃんと言うから……」


慌てたように言って、俺の顔を手でグイッと遠ざけると、ようやく自分の気持ちを話し出す。


「そうだよ……俺はいまだにさとみが忘れられないし、愛してるよ……

離婚してからもずっと忘れた日は1日だってなかった

逆に時が経てば経つほど……さとみが恋しくて仕方なかった……

あやとひなには悪いけど、さとみを失った悲しみと寂しさを埋めるために結婚したようなもんだったかもしれない……

最低だな?俺は」


やっと……認めたな……


俺は小さく息を吐き出すと、自分の中にある嫉妬と言う名のどす黒い感情をなんとか追い出して、課長の思いを受け入れた。


「桜井……どうした?」


そう声をかけられて、ハッとして顔を上げると、ずいぶん長い時間、心の中の葛藤と闘っていたらしい。


「いや……そうですか……

わかりました……

本当はわかりたくないけど、部長の気持ち……しっかり受け止めました」


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