もうひとつの恋
「そう……ですか

まあ予想はしてましたけどね?」


なるべく明るく笑いながらそう言うと、彼女は余計に辛そうな顔をする。


「あのさ……

もしあの二人がお互いをまだ忘れられなくて、思いあってるんだとしても……

何もあんたがそれを手助けしなくたっていんじゃないかな?

あの二人の問題なんだし、桜井がそこまでする必要ないでしょ?」


美咲さんの言う通りだと自分でも思う。


でも気持ちは嬉しいけど、それじゃいつまで経っても、お互いがお互いを思ってることに気付かないかもしれない。


そしてこの先なんの進展もないまま時間だけが過ぎ去ってしまう可能性もある。


健太のためにもそれだけは避けたかった。


二人がまだ想いあってるのなら、両親揃って健太を育てた方がいいに決まってる。


健太にだって父親が必要なはずだ。


俺が父親になれなかった以上、部長に父親になってもらわなきゃ困る。


だって部長は本当の父親でもあるんだから……


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