もうひとつの恋
「美咲さん……

俺はさとみさんだけじゃなくて、健太にも幸せになってもらいたいんですよ

あの二人の想いがわかってしまった以上……

自分の意地とかプライドのせいで、それを壊したくないんです」


美咲さんは眉間に皺を寄せて悲しそうな顔で俺を見る。


「ほんとあんたってお人好しなんだから!

あんなバカな二人のために桜井がそこまでしなくたっていいのに……

なんか……私の方が悔しいよ」


思いがけず涙を流す美咲さんに、俺は慌てて声をかける。


「ちょっ!美咲さん?

何泣いてんですか!」


美咲さんの気持ちは嬉しいけれど、予想外の展開にどうしていいのかわからない。


「泣いてないわよ!

桜井の話がつまんなすぎて、あくびが出ただけなんだから」


そんな言い訳をしながら、恥ずかしそうに顔を背ける美咲さんが、ちょっとだけ可愛く感じる。


意外と可愛いとこもあるんだよな?


実際そんなこと言ったら殴られそうだけど……


ふっと思わず笑ってしまうと、美咲さんが背けていた顔を元に戻して俺を睨んだ。

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