もうひとつの恋
「なあ……今からでも遅くないから行き先変更しようぜ?

新宿御苑とか上野公園とか……他にいくらでもあるだろ?」


いやいや、無理!


だいたいこのまま行けば、さとみさんに会えるんだから……


我慢してくださいよ、部長。


「いや、水族館とかもあるし、絶対葛西臨海公園のが楽しいですって!」


部長はそんな俺の真意など知るはずもなく、よっぽど嫌なのかため息をつきながらぼやき始めた。


「なにが悲しくてお前と二人で広い公園を散策したり、水族館で魚眺めたりしなくちゃいけないんだよ」


あまりにも情けない声で呟く姿に、俺は仕方なく少しだけ情報を与えてみる。


「いや……実はですね?
現地集合で俺の女友達二人と落ち合うことになってるんです……よねぇ?」


アハハッとごまかすようにして笑うと、部長の顔が少しだけ明るくなったような気がした。


「そうならそうと早く言えよ……

俺は昨日からお前と二人で花見するのを想像して、憂鬱でしょうがなかったんだぞ?」


よっぽど恥ずかしかったんだろう。


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