もうひとつの恋
目の前のさとみさんの視線が、俺から俺の後ろへと移る。


そして俺の後ろで視線を止めると、目を見開いて驚いたような声をだした。


「えっ!?」


たぶん、後ろにいる部長も、同じ顔をしているんだろうなと俺は思った。


久しぶりの再会にお互いどんな気持ちなんだろう?


自分が引き合わせると決めたくせに、やっぱり嫉妬という名の感情は、簡単にはなくなってくれない。


そんな自分に呆れながらも、そっと二人の様子を窺うと、お互い顔を見合わせたまま、固まって動かなかった。


それが妙に可笑しくて、俺はニヤッと笑いながらお見合いのような紹介をし始める。


「こちら、俺の上司で大沢さんです」


まず、さとみさんに向かって部長を紹介した。


「部長!こちら、俺の友人のさとみさんと美咲さんです」


次に今度は部長にさとみさんと美咲さんを紹介する。


それを聞いて、明らかに不機嫌な顔をした部長はジロリと俺を睨んだ。


なんで俺がこの二人と仲良く友人関係なんかになってんだろうって思ってるに違いない。


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