もうひとつの恋
ほんと、いっつも一番辛い時には美咲さんがいてくれるんだよなぁ……


彼女がいなかったら、きっと俺は嫉妬に狂ってみっともない姿をさらしていたかもしれない。


俺の気持ちを知ってか知らずか、健太が不安げに俺を見つめる。


子供に心配されるほど情けない顔をしてたのかと俺はそんな自分を反省して健太ににっこり笑いかける。


それから笑わせてやろうと脇の下をくすぐると、キャッキャッとはしゃいで身を捩った。


笑顔になった健太に、俺はそっと耳元で囁いた。


「あのおじさんはね?

ママの昔からの知り合いなんだよ?」


すると不思議そうに首を傾げて、健太は俺に問いかける。


「そうなの?」


「うん、だからママに聞いてごらん?」


健太は少し安心したように、今度はさとみさんの元へと走っていった。


「ママー!
このおじさん、ママも知ってる人?」


「マ…マ……?」


健太がさとみさんをママと呼ぶのを聞いて、部長が明らかに動揺しながらそう呟く。


「うん、そうだよ?

昔ね?ママがまだ大学生だった頃からみいちゃんと三人でお友達だったんだ」


さとみさんが、健太にもわかるように優しくそう言った。


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