もうひとつの恋
「ただいま」

そう奥に向かって声をかけるとすぐに結衣が顔を出した。


「純ちゃん!おかえりぃ!」


久々の再会がよっぽど嬉しいのか、思いきり抱きついてくる。


俺は結衣を抱き止めて、ゆっくりと引き離した。


「ただいま……

カレーいいにおいだな?
腹減ったぁ」


結衣は少しだけ不思議そうな顔をしたものの、カレーに食いつく俺を嬉しそうに見上げた。


そんな顔を見ていると、先程の決心が揺らぐ。


いや……だめだ……


ちゃんと言わなきゃ……


とりあえずカレーだ。


うん!カレーを食べてから考えよう。


「結衣、着替えてくるからカレーの用意しといて」


そう努めて明るく言うと、結衣は嬉しそうに返事をして、キッチンにパタパタと走っていった。


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