もうひとつの恋
俺の話がそうとうショックだったんだろう。


じっと黙って聞いていた部長が、手で顔を覆ってガックリと項垂れる。


少しは思い知ればいいんだ。


さとみさんや俺がどんな気持ちだったのかを……


自分の中の怒りが収まらずに、俺は溢れる言葉を止められなくなる。


「それからしばらく連絡は全くなくて……

別れたことも知らなかったから、こっちから連絡しようにも連絡先、知らなかったんで……

会うこともなかったんですけど……

いつだったか部長の様子がおかしかった頃かな?

たまたま俺一人で得意先から戻る途中に、偶然……さとみさんに会ったんです」


俺は項垂れる部長を横目で見ながら、追い討ちをかけるように話を続ける。


「さとみさん自身はその時だいぶふっくらして、元気そうだったんで安心したんですけど……

その時は別れたことも知らなかったんで

じゃあなんで部長の様子がおかしいのか疑問に思ってさとみさんに聞いてみたんです

今思うと別れたことを俺に悟られないように、必死で部長を庇ってたんですね?

でも様子は聞きたかったのか、心配してましたよ……部長のこと」


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