もうひとつの恋
一瞬……部長の瞳が揺れた気がした。


結婚まで考えていたなんて、さすがに思わなかったんだろう。


部長の顔がわかりやすいくらいに動揺している。

「でも……あっさり振られちゃいましたけどね?

俺が……彼女を幸せにしたかったんですけど……
……ダメでした」


そこまで言うと、振られた時の光景が鮮明に思い出された。


せっかく蓋をしていたさとみさんへの切ない思いが、溢れそうになる。


だけど……悔しいけど……


ちゃんと部長がさとみさんと向き合えるように、俺が背中を押さなきゃならない。


それがさとみさんや健太の幸せに繋がるんだから……


ふぅ……と息を整えてそう決心すると、部長に最後の忠告をする。


「この前……部長にさとみさんへの気持ちを確かめたの覚えてますか?

部長……いまだに忘れられないって……言ってましたよね?」


チラッと部長に目をやりながらそう聞くと、険しい顔をしながらコクリと頷いた。


「だから……ですよ

俺的にはさとみさんを裏切って、他の人と結婚するようなやつに……

離婚したからって……ほんとは会わせたくなかったんだ」


声が震えてくる。


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