もうひとつの恋
部長と中身の濃い話をしたせいで、自宅に着く頃にはすっかり俺は疲れきっていた。
重い足取りで階段を昇ると、廊下をゆっくりと歩く。
玄関のドアを開けて中に入ると、真っ直ぐ台所に向かった。
冷蔵庫からビールを取り出して一気に飲み干すと、ようやく一息ついた気がする。
ふぅ……と大きく息を吐くと、ソファーにドサッと横たわった。
目を瞑って今日のことを思い返すと、なんとも言えない焦燥感に襲われる。
俺は急に美咲さんの声が聞きたくなって、携帯を取り出した。
いつものように美咲さんの憎まれ口でも聞いて、元気をもらいたい。
そんな気持ちで美咲さんの番号を呼び出す。
プルルルル……プルルルル……プルルルル……プルルルル……プルルルル……
まだ帰ってないのかな?
いつもはすぐに出てくれて、うるさいくらいに何か喋ってくるのに……
諦めて電話を切ろうとボタンに手をかけた瞬間、呼び出し音が途切れた。
「もしもし……」
――あれ?
なんだかいつもよりテンションが低い気がする。