もうひとつの恋
とりあえずコンビニで買ったデザートを冷蔵庫に入れてから、部屋へと向かう。


そんなに広くない部屋からは、結衣の鼻歌が聞こえてくる。


機嫌のいい彼女を間近で見ていると、このあと話すはずの別れ話にやはり罪悪感を覚えてしまう。


着替えて居間に顔を出すと、ちょうど結衣がカレーを皿に盛って、こちらのテーブルに持ってくるところだった。


サラダとスープも運び終えて、俺の対面に座ると両手を合わせて「いただきます」と言って食べ始める。


俺も同じように「いただきます」と言ってから、久しぶりのカレーを口に運んだ。


結衣のカレーを食べるのは最後だと言うのに、このあと別れを切り出さなければいけないと思うと、味がよくわからない。


胸が詰まっていつものようにおかわりができないでいると、結衣が心配そうに俺を覗きこんだ。

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