もうひとつの恋
「桜井……

あんた頑張ったね?」


それだけ言うと、鼻をすする音が聞こえる。


美咲さんは泣いていた。


なぜだかわからないけど、俺に頑張ったと言ってくれたまま、泣きじゃくっている。


俺はどうしたらいいのかわからずに、美咲さんに動揺しながら問いかけた。


「あの……美咲さん?

どうしちゃったんすか?

なんで泣いてんのか話してくださいよ……

俺、どうしたらいいのか……」


そこまで言うと、美咲さんがゆっくりと泣くのを堪えながら話し出す。


「ごめん……

泣くつもりなんか全然なかったのに……

あんたがあの二人のために、どれだけ傷付いたかと思うと……悔しくて……」


あぁ……もしかしたら……


さとみさんも部長と同じような反応だったのかもしれない。


だから元気なかったのか……俺のために……


なんだかさっきまで落ち込んでた気持ちが、美咲さんの言葉で嬉しい気持ちに変化する。


その気持ちを隠しきれなくて、俺は思わずフッと笑ってしまっていた。

< 250 / 432 >

この作品をシェア

pagetop