もうひとつの恋
いつもの調子を取り戻した美咲さんに、俺は内容なんか頭に入らないくらいホッとした。


やっぱりいつもの美咲さんじゃなくちゃ調子が狂う。


その時、突然健太が俺に話しかけてきた。


「ねえねえ……じゅんちゃん、ママにふられたの?」


思わず美咲さんと顔を見合わせる。


不安そうな顔をして、俺たちを見上げる健太に、なんて言ったらいいのか考えた。


こんなに小さくても、嘘をつくようなことはしたくない。


小さいからってわかんないと思っていたけれど、健太なりにきちんと意味を理解してるように見えた。


「健太……実は俺、ママのこと好きだったんだ


出来れば健太のパパになれたらいいなって思ってたんだけど……

パパにはなれなかった

ごめんな?」


そう言って健太の頭をそっと撫でた。


健太は目に涙をいっぱい溜めて、俺に一生懸命訴える。


「ぼく……いつかじゅんちゃんがパパになるっておもってたのに……

なんでなの?

ママがダメだって、いったの?」


大粒の涙をポタポタ落としてそう言うと、健太は俺に抱きついてきた。


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