もうひとつの恋
美咲さんのは海老やイカの入った海鮮焼きそばだった。


塩をベースにちりめんじゃこが入っていて、わりとあっさりしていたっけ。


美咲さん、どうしてるだろう?


ふと彼女のことが気になった。


「あんた、休みの日に実家なんか戻ってきて

彼女とかいないの?」


ボーッと考え事をしていた俺を、母の声が遮断する。


うんざりしながら母の顔を見ると、興味津々といった様子で目をキラキラさせながら、俺の答えを待っていた。


俺は小さくため息をつきながら、仕方なくゆっくり口を開く。


「いたら実家なんか帰ってきてないよ……」


すると母は分かりやすいくらいにガッカリして、俺を責め始めた。


「実家なんかって失礼ね!

だいたいもうすぐ30になるって言うのに、彼女の一人もいないなんて情けない……

大学の頃付き合ってた……なんだっけ?

結衣ちゃん?

あの子とは割と長く付き合ってたのに、なんで別れちゃったの?」


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