もうひとつの恋
「えぇ!そうなの?

ほらぁ、あんたがボヤボヤしてるから、他の人にとられちゃうんじゃない

はあぁ……頼みの綱だったのに残念だわぁ」


俺のことは放っといてほしい……と心底思う。


急いで焼きそばを食べて、早くこの場を去りたい。


そう思って焼きそばを頬張っていると、母が急に真面目な顔をして、ズイッと覗きこんでくる。


「あのね?純……」


――なんだ?


急に声のトーンが変わった母を警戒しながら、焼きそばを食べる手を止めずに目だけを母に向けた。


「もし、あんたさえ良かったら、会わせたい人がいるんだけど……」


どういう意味だ?


話の流れからすると、女性ってことなんだろうか?


俺は肯定も否定もしないまま、次に母が何を言い出すのか見守った。


「お母さんが行ってるお料理教室のお友だちにね?

ちょうどあんたと同じくらいの娘さんがいるらしくて、純にどうかって言ってくれてるのよ

どう?会うだけでも会ってみたら?」


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