もうひとつの恋
俺はどうでもよくなって、つい母の誘いに乗ってしまった。


母は待ってましたとばかりに携帯を取り出して、いそいそと電話し始める。


――えっ!?


嘘だろ?もう連絡すんのかよ……


俺の気持ちが変わらないうちにと思ってるのかもしれないが、あまりの手際の良さに呆れた。


「純!オッケーだってよ?

良かったわねぇ

とりあえず来週の日曜日に銀座で会うことにしたから、いいわね?」


「えっ!?ていうか、もしかして母さんも来るわけ?」


「当たり前じゃない!

あんたたち面識ないんだから、向こうもお母さん一緒に来るみたいだし」


勘弁してくれよ……


なんだか話が大きくなってないか?


どちらかというと見合いみたいになってるような……


「母さん、場所さえ指定してくれれば当人同士で大丈夫だよ

悪いけど親は遠慮してくれないかな?」


何が悲しくて親までついてこなくちゃなんないんだ……


もうすぐ30になろうって男が、情けないだろ……


母は残念そうな顔をしながらも、会ってくれるんならとそれを快諾してくれた。


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