もうひとつの恋
「あぁ、そのことですか?

さとみさんに甘えてる部長には言いたくなかったんですよねぇ、俺」


部長をチラッと見て、わざと挑発するような言い方をする。


「俺だって健太の父親になりたかったし、さとみさんの夫にもなりたかったんですよ?

それを全部諦めて部長に譲るんだから、そのくらいの意地悪してもバチは当たらないと思いますけどね?」


今までの鬱憤を晴らすように、俺はそれがわざとだったことを明かす。


すると部長は怒ることなく、余裕な笑みを浮かべた。


「そうだと思ったよ

でもまあ、お前からしたら情けない上司にお灸をすえてやれって思うよな?

お前には本当にいろいろ迷惑かけたし……

それなのにさとみと会わせてくれて、感謝してる

これからも健太くんと仲良くしてやってな?」


部長が俺に本気で感謝してるのはわかった。


でもなんとなくその言葉にカチンときてしまう。


「言われなくても、健太はずっと俺の弟分ですから!

部長が見て来なかった三年間を俺は知ってます

だから今度こそ、さとみさんも健太も幸せにしてあげてくださいよ?」


< 273 / 432 >

この作品をシェア

pagetop